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特別寄稿
ジャンクサイエンスとの戦い:医療訴訟における専門委員会の活用
Junk Science and the Use of of Expert Panels in Biomedical Litigation
ジョセフ・M・プライス
1
,
エレン・S・ローゼンバーグ
1
Joseph M Price
1
,
Ellen S. Rosenberg
1
1フェーグル & ベンソン LLP
1Faegre & Benson LLP
pp.1011-1020
発行日 1998年8月25日
Published Date 1998/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902510
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ジャンクサイエンスという言葉は,訴訟で用いられる場合,科学や医学の本流からは明らかに外れたものと定義される.ジャンクサイエンスの信頼性は実証されておらず,世間一般にも受け容れられていない.しかし,科学的な信憑性に欠けているにもかかわらず,医療責任が問われる裁判において,ジャンクサイエンスが証人となる専門家や陪審員の間で因果関係を判定する根拠として使われる傾向が強まっている.信頼性の高い科学的な証拠が存在する場合でも,裁判所はジャンクサイエンスを採用してきた経緯がある.
米国におけるシリコーン製豊胸材の埋め込み手術(シリコーン製豊胸インプラントorシリコーンバッグ)をめぐる訴訟は最も顕著な例である.こうした豊胸手術が合併症を引き起こすかどうかの問題は,科学者や医師の間で論議を呼んでおり,また手術を受けた女性にとっては感情的にならざるを得ない問題であるが,ジャンクサイエンスを支持する弁護士や専門家の証人にとっては,恰好のビジネスチャンスとなっている.訴訟の対象となった疾病や症状について,ジャンクサイエンス側は短期間で都合のいい答えを陪審員に示したが,信頼できる科学者らがシリコーン製豊胸材の埋め込み手術との因果関係は認められないと判断するまでには数年を要した.シリコーン製豊胸材の埋め込み手術の訴訟は,ジャンクサイエンスに基づく判断と科学的方法や事実や現実に基づく判断との間にありがちな決定的な食い違いを浮き彫りにしている.
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