視座
新まい教授の苦悩
藤井 克之
1
1東京慈恵会医科大学整形外科
pp.679
発行日 1996年6月25日
Published Date 1996/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901918
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教授とは,“教え授ける”と書く.しかし,整形外科学教室の主任教授に就任して1年も経過していない私には,教室員を十分に教えるだけの力は持ち合わせていない.何とか,若い者の先頭に立って学ぼうと頑張るが,外来,手術,教育,論文の校閲,客人,電話,書類などに追われ,時があっという間に過ぎてゆく.仕方なく,休日が自分の唯一の勉強日と決めて大学に足を運んでいる.
教授のみならず,教室員をも異常なまでの多忙な状況に追い込んでいるものは,何と言っても,増加の一途を辿る学会,研究会のようである.教授としての責任感から,すべての会に参加していると,当然のことながら診療に穴があく.また,次から次へと演題をエントリーさせると,教室員は発表の準備に追われ,新たに物を考えたり,論文を書く時間を失ってしまう.したがって,私たちの教室では,体裁にはとらわれず,発表をする学会,研究会を最少限に留め,必ず立派な論文としてまとめるという方針をとることにした.学術活動において,同じ仕事(研究)を少しだけモディファイし,数回にわたって発表するといった数の勝負は絶対にやめるべきで,これは,大変な罪と恥に値する.自分達の手で己を忙しくし,余裕と発展性のない大学生活を送ることは,全く情けのないことではなかろうか.
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