- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今から10年前,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法,薬機法)と「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療等安全性確保法,安確法)の2つの法律が施行された(岡田 潔先生の項を参照).薬機法によって再生医療等製品というカテゴリーが定められ,承認を受けた製品も徐々に出てきた.一方,安確法下では,多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)や間葉系幹細胞などを用いた,いわゆるbiologics治療について新たな規制が設けられ,保存療法と手術療法の間のアンメットニーズが大きい変形性関節症(osteoarthritis:OA)などを対象に広がりをみせている.
筆者はOAの分子病態の研究をライフワークとして取り組んできたが,その縁で8年前から培養自家脂肪由来幹細胞を用いた治療の臨床と基礎研究にも取り組んできた.当初は疑わしさでいっぱいであったが,患者の経過や臨床成績(山神良太先生の項を参照)を目の当たりにし,考えは一変した.筆者の研究室では作用機序の解明にも取り組んでいるが,本治療が滑膜の構造的改変を介してOAの病態を修飾することも明らかになりつつある.しかしながら,PRPや幹細胞治療の効果には個人差が大きく,OAの病態の多くが未解明なこともあって,適応についてはいまだ議論の余地がある.自由診療であるため,高額な治療費もしばしば話題となる.また治験のような厳格なデザインでの大規模臨床研究が実施されていないことへの批判の声も多いが,再生医療等製品には非常に高い安全性基準が設定されており,結果として細胞製品はいずれも自由診療での一般的な金額をはるかに上回る価格帯となっているため,OAのようなcommon diseaseに関して再生医療等製品は医療経済的に現実的なカテゴリーではなくなっている.自由診療としての素地が用意され,保険収載というインセンティブが期待できない状況に鑑みると,事態はそう単純ではないことは理解できよう.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.