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Evidence based medicine(EBM)はランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)とそのメタアナリシスにより得られたレベルの高いエビデンスにより実現されてきたが,RCTで厳格な症例の選択基準が適応されるとさまざまな患者背景をもつ疾患では,その結果を必ずしも臨床に応用できないことが欠点といえる.特に外科手術治療のRCTでは,患者のランダム化拒否,盲検化困難,長期フォローの必要性,コストなどの問題からRCTの実施には多くの困難を伴う.これに対し,網羅的に大量の情報を収集・データベース化した,いわゆる「リアルワールドデータ(RWD)」からさまざまな事象の発見を行うレジストリー研究は,RCTの欠点を補うものとしてその重要性が高まっている.本特集では整形外科領域の大規模レジストリーによるリアルワールドエビデンス構築の現状と展望の理解を深めていただくことを目的に,11名の専門家に参画いただいた.
まず,康永秀生先生はRCTとRWDを用いたレジストリー研究の概要をまとめられ,それぞれの欠点を補完的に補う臨床研究の「2本の柱」であることをわかりやすくご解説いただいた.藤森研司先生には「高齢者の医療の確保に関する法律」を根拠法として運用されている電子レセプトと特定健診のアーカイブであるNational Database(NDB)を詳しくご説明いただいた.金村徳相先生には本邦初の筋骨格系手術ナショナルレジストリーかつ複数の整形外科関連学会等による大規模レジストリーのプラットフォームとしての日本整形外科学会症例レジストリー(JOANR)についてその現状と展望を述べられ,JOANR連携手術レジストリーを解説する各稿(秋山治彦先生,田島卓也先生,有馬秀幸先生,上田明希先生,高橋 宏先生,井上 玄先生)につなげていただいた.次いで,病態(疾病)関連の包括的レジストリーとして小倉浩一先生には1950年代からの長い歴史を有する全国骨・軟部腫瘍登録を,また山本智章先生には日本脆弱性骨折ネットワークによるFFN-Japanデータベースについて解説いただいた.
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