特集 ここまで来た! 胸郭出口症候群の診断と治療
緒言
古島 弘三
1
Kozo Furushima
1
1慶友整形外科病院胸郭出口症候群治療研究センター
pp.129
発行日 2024年2月25日
Published Date 2024/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202891
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胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS)は,整形外科の分野で広く知られているものの,依然として解決されていない神経・血管障害です.この症候群の診断と治療は複雑であり,症状は容易には改善されないことも多いのが事実です.手術治療もしばしば避けられる傾向にあります.そのため,多くの患者がさまざまな医療機関を転々としてしまうことも珍しくなく,場合によっては精神疾患と誤診されてしまうこともあります.
TOSの歴史を振り返ると,以前は腕神経叢の圧迫が主な原因と考えられ,胸郭出口周囲の絞扼性末梢神経疾患と関連づけられてきました.これに基づき,多くの圧迫症候群が提唱され,診断方法に関する研究が進められてきました.しかし,圧迫だけではなく牽引刺激も症状に影響を与えます.つまり,圧迫と牽引という2つの物理的要因が症状を引き起こすという概念が以前から注目され,治療を困難にしています.圧迫因子が主なら手術治療による改善が期待できますが,牽引による症状の改善は難しいことが多いです.この牽引による症状の評価と治療方法の確立は,今後の課題と言えるでしょう.
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