境界領域/知っておきたい
慢性疼痛治療におけるマインドフルネス
田中 智里
1
,
藤澤 大介
1
Chisato TANAKA
1
,
Daisuke FUJISAWA
1
1慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室
pp.1012-1016
発行日 2022年8月25日
Published Date 2022/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202418
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はじめに
本邦における大規模調査1)にて,慢性疼痛の有病率は全成人の22.5%と報告され,推定患者数は2300万人を超える.疼痛部位は腰(64.1%),肩(47.9%),膝(25.6%)の順に多く,運動器関連疼痛が慢性疼痛のほとんどを占める.慢性疼痛保有者の65%が医療機関を受診し,受診先は80%以上が整形外科であった.しかし医療機関を受診した患者のうち70%以上が治療に満足していないとの結果も示されており,慢性疼痛に有効な医療体制の構築が急がれている2).
痛みは情動や認知を含む多面的な体験であり,侵害受容性疼痛の要素が大きい急性痛に比べて慢性疼痛では心理社会的な要因による修飾が大きい.解剖学的な変化にみあわない疼痛や抑うつ,不安などの苦悩が持続していることが多い.慢性疼痛の治療では複数の診療科が分野横断的に介入する集学的治療が重要とされ,薬物療法,インターベンショナル治療,リハビリテーションと並んで心理的アプローチが重視される3).マインドフルネス療法はそのような心理的アプローチの1つである.
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