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はじめに
腰椎前方手術にまつわる歴史と変遷
腰椎手術には主に前方法,後方法の2通りのアプローチがある.1990年代までの脊椎外科の歴史は腰椎前方固定術(anterior lumbar interbody fusion:ALIF)が隆盛を極めていたが,ペディクルスクリューをはじめとする後方インストゥルメンテーションの開発,発展に伴い2010年過ぎまでは後方法が腰椎手術アプローチの主体として遷移し,前方手術の実施件数は減少の一途を辿っていた.一方で2012年以降,低侵襲腰椎前方手術としてのOLIF(oblique lateral interbody fusion)やXLIF(extreme lateral interbody fusion)などのLIF(lateral interbody fusion)手術が本邦に導入され,専用レトラクタを用いた低侵襲な前方アプローチによる効率的な前方固定手術が可能となった.このことで,前方手術は有力な脊椎手術アプローチとして再認識されるようになった.
OLIF,XLIFはそれぞれ大腰筋の前側方から,もしくは大腰筋の筋束を鈍的に分けて椎間板にアプローチするかの違いはあるものの,椎体横径に相当する50mm程度の大型椎間ケージを側方から椎体間に挿入して不安定脊椎の安定化を得るという点では,同様の概念による低侵襲前方固定術である.これにより,従来であれば比較的大きな視野を要していた前方支柱再建や椎間高の回復,それに伴う神経の間接除圧を低侵襲下で実現することが可能となり,それ以降は後方アプローチの椎体間固定術(posterior lumbar interbody fusion:PLIF,trans-foraminal lumbar interbody fusion:TLIFなど)に加えて前方のLIF手術が術式選択の大きな選択肢となった1)(図1).
本稿ではOLIF,XLIFについて手術手技の詳細は別の機会に譲り1-3),これらの低侵襲腰椎前方固定を安全かつ確実に実施するために必要な解剖の基礎知識について概説する.
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