誌上シンポジウム 変形性膝関節症における関節温存手術
緒言
中村 憲正
1
Norimasa NAKAMURA
1
1大阪保健医療大学保健医療学部・スポーツ医科学研究所
pp.552
発行日 2019年6月25日
Published Date 2019/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201382
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これまで変形性膝関節症の治療体系は,安静に始まり減量,運動療法,物理療法,あるいは薬物療法などの保存療法を行い,これらの治療に反応しない症例では外科的治療を考慮するというものが一般的であった.しかし,患者の中には外科的治療に抵抗を感じる方も多く,従来の保存療法と外科的治療の間を埋める新たな治療法の確立が望まれていた.
近年,再生医療研究の進展により血液由来製剤や細胞治療などのいわゆるバイオセラピーと称される新たな治療法が開発され,新たな治療体系としての可能性が期待されている.もちろん,これらの治療のエビデンスはこれから蓄積されていくものであり,まだその真価は定まってはいない.しかしこれらの治療原理,作用機序,あるいは前臨床研究で明らかとなったことなどの知識を整理して習得することは意味のあることと考えられる.また,これらのバイオセラピーの効果を最大限に発揮させるためには,関節内の生物学的・力学的環境の最適化が重要である.加えて,進行期の変形性関節症では,下肢アライメントの異常による力学的にも異常な負荷がもたらされることが問題であり,これに対処する必要がある.脛骨,大腿骨,あるいは両者の骨切り術はアライメント矯正の手法として合理的な治療であるが,近年,インストゥルメンテーションを含む手術手技の改良により多様な矯正が,長期の後療法を必要とせずに可能となってきた.
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