誌上シンポジウム サルコペニアと整形外科
緒言
大鳥 精司
1
Seiji OHTORI
1
1千葉大学大学院医学研究院整形外科学
pp.234
発行日 2019年3月25日
Published Date 2019/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201301
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筋減少症,サルコペニアとは加齢や疾患により,全身の筋量が減少することで身体機能の低下が起こることである.サルコペニアの女性は非サルコペニアの女性と比べて,骨粗鬆症が13倍高く,骨折が3倍多いとされる.この理由として,骨粗鬆症に関連するビタミンD受容体は筋にも存在し,ビタミンDの低下は,直接的に筋量低下をもたらす.閉経後骨粗鬆症患者では低ビタミンD血症,低骨量,低筋量,腰痛の頻度が高く.各々の因子の相関が報告されている.この観点からも,サルコペニアにおける筋量低下は大きな問題点であり,特に骨粗鬆症脊柱後弯に関与する体幹筋の重要性は明らかである.
サルコぺニアの診断にあたり,dual energy x-ray absorptiometry(DXA)法がgold standardであった.1998年にBaumgartnerらは四肢の筋量値に注目し,サルコぺニアの明確な定義を提唱した.内臓を含む体幹筋量測定はDXAでは困難であるが,四肢の場合,脂肪量と骨量を除いて筋量とすることができるために四肢筋量を使用するのが一般的である.European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)は,6mの歩行テスト,筋量の測定,握力の測定結果による診断アルゴリズムを確立したが,この場合も筋量は下肢筋量を測定する.2014年ASIAN Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア人特有の診断基準が作成されたが同様である.以上から,体幹筋量をベースとしたサルコペニアの定義は存在しない.
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