誌上シンポジウム 慢性腰痛のサイエンス
緒言
大鳥 精司
1
Seiji OHTORI
1
1千葉大学大学院医学研究院整形外科学
pp.1117-1118
発行日 2017年12月25日
Published Date 2017/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200970
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非特異的腰痛は,ぎっくり腰,筋膜性,椎間板性,椎間関節性,神経根性などが含まれる.慢性腰痛患者へのブロック注射から得られた知見として,疼痛発生部位の可能性について,椎間板の可能性39%,椎間関節の可能性,15〜32%,仙腸関節の可能性13〜18.5%と報告された.近年,高齢社会を迎え,骨粗鬆症,それに付随するサルコペニア,脊柱変形の患者が増加している.実際にPubMedで検索してみた場合,椎間板や神経根由来の腰痛の研究はここ数年プラトーに達しているが,骨粗鬆症,筋由来の腰痛研究は年々増加の一途である.ただ残念ながら,実臨床で腰痛の発生源を限定することは,85%は困難とされている.
一方で,腰痛の病態としては,侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)と神経障害性疼痛に分類され,それに見合った薬物療法,ブロック療法が施行される.臨床では,炎症性疼痛と,神経障害性疼痛を判別するさまざまなサポートツールが開発されている.平成23年(2011年)に日本脊椎脊髄病学会主導研究として実施された脊椎関連慢性疼痛患者における神経障害性疼痛の有病率調査により,脊椎関連慢性疼痛患者の神経障害性疼痛有病率は53.3%,うち腰痛患者では29.4%と報告された.この結果は本邦の脊椎関連慢性疼痛患者の神経障害性疼痛有病率に関する一定の見解を与えたが,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などでの殿部痛・下肢痛などの神経障害性疼痛由来を否定できない病態の罹患率と比較すると,必ずしも実情を正確に反映していない可能性がある.さらには下肢痛のない,腰痛のみの患者でも痛みが強い場合,神経障害性疼痛に含まれてしまう問題点があった.
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