最新基礎科学/知っておきたい
運動器慢性痛に関与する脳内メカニズム
加藤 総夫
1
Fusao KATO
1
1東京慈恵会医科大学神経科学研究部/痛み脳科学センター
pp.166-170
発行日 2018年2月25日
Published Date 2018/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201025
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「痛みの経路」という亡霊
患者の痛みの訴えに耳を貸すことが全人的医療の基本であることは言うまでもない.それは何のためか? なぜ患者の痛みの訴えに耳を傾けるよう医学部や臨床研修で指導するのか?
その理由の1つは,患者の痛みの訴えから,身体に起こっているなにごとか(位置? 強さ? 経過?)についての情報が得られる,という経験的な根拠に基づくものである.患者が「述べる」身体の状況に関する報告に耳を傾け,医師は,診断学の教科書や自分の経験に基づき,その「痛みの原因」を突き止め,なんらかの治療を施す.だが,このような考え方は「ある部位の痛みにはその部位に原因がある」という「痛みの因果関係」と呼ぶべき亡霊によって形作られている.
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