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日本での創外固定の歴史は1924年の前田式骨折接合器に始まり,1960年代には河邨式創外固定器による骨延長が行われ,1980年代後半からロシアのIlizarovによる組織延長術(distraction histogenesis)や,De Bastianiによる仮骨延長術(callotasis)が急速に広まった.特に組織延長術は,関節鏡,人工関節にならび20世紀後半の整形外科分野の画期的進歩の1つといえる.日本に本格的にIlizarov創外固定器が導入されて約30年が経過している.近年は,患者や医師の創外固定に対する負担感や,内固定材の進歩とともに,創外固定治療はやや下火になりつつある.しかしながら,創外固定でしかできない治療があり,その有用性がいまだに極めて高いのも真実である.
本誌上シンポジウムでは,テーマを「創外固定でどこまでできるか?」とし,現状の創外固定治療の限界を打破し,また若手の整形外科医に創外固定の魅力を知ってもらおうと日々奮闘している6名の創外固定のエキスパートにご執筆をお願いした.野坂光司先生には外傷治療における創外固定器の有用性について執筆していただいた.寺本司先生には創外固定を用いた膝・足関節部の骨切り術について,創外固定器の有用性と骨切りのコンセプトについて執筆していただいた.川端秀彦先生には上肢疾患の特に細かい部位における創外固定の使用法,有用性について,大関覚先生には足部疾患における創外固定治療について,金郁喆先生には小児疾患における創外固定の有用性について,松原秀憲先生には感染・偽関節・変形などの外傷後遺症に対する創外固定を用いた治療について解説いただいた.どの先生にもそれぞれの先生方が得意とする分野における創外固定の有用性や魅力,限界を余すところなく伝えていただけたと思う.
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