誌上シンポジウム MISの功罪
緒言
土屋 弘行
1
Hiroyuki TSUCHIYA
1
1金沢大学大学院医薬保健研究学総合研究科・医薬保健学域医学類機能再建学(整形外科学)講座
pp.110
発行日 2016年2月25日
Published Date 2016/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200458
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「Big surgeon, big incision」という言葉を外科医であれば誰もが一度は耳にしたことがあるであろう.訳するまでもなく「偉大なる医師は大きな皮膚切開のもとで手術を行う」という意味だ.誰もが駆け出しの頃は「下手なうちは大きく切って,しっかり視野を確保して手術しろ!」と指導されたはずで,それはもちろん現在でも全世代に共通する医学的教訓である.しかしながら,時代の流れとともに患者も医者も欲張りになってきて,正確に目的を達するために他の部位の多少の侵襲は目をつぶるというかつてのやり方では満足されなくなってきた.正確に目的を達し,なおかつ侵襲も可能な限り少なくしたいというのが現代医療のトレンドだ.そのような時代の流れのなかで「MIS:minimally invasive surgery」という言葉がすっかり定着した.
MISとはその名の通り最小侵襲手術であるが,人工関節などの手術では傷も小さく回復も早い,素晴らしい手術であるといった美辞麗句がマスコミやインターネットで取り上げられている.しかしながら,侵襲を少なくし組織温存に努めるがゆえに,手術手技が煩雑になり,より技術と経験を求められる,克服すべきラーニングカーブが長い,より医師のストレスが増える,教育向きでない,特殊な機器を要する,などいくつかのデメリットがあるのは否めない.そこで,2000年後半以降からの日本におけるMISの変遷と進歩,反省,展望をまとめるべく「MISの功罪」という特集を企画させていただいた.
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