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皆さんは,CRF(chronic renal failure:慢性腎不全)とCKD(chronic kidney disease:慢性腎臓病)の違いをご存じだろうか.CRFは聞き馴染んでおられても,CKDとの違いを答えられる方は,意外と少ないかもしれない.
CKDは,2002年に米国腎臓財団から提唱された概念であり,比較的新しいものである.CKDは,基本的には原疾患に関わらず,慢性に経過する腎臓の病気を包括して扱う疾患概念である.GFR(glomerular filtration rate:糸球体濾過量)と蛋白尿(あるいはアルブミン尿)のみからその重症度が評価され,この疾患概念が確立したことにより,腎臓病診療の標準化は大きく進展した.一方CRFとは,慢性的に低下した腎機能状態のことを指す.急性腎不全では,多くの症例で腎機能は回復することが多いが,慢性腎不全では腎機能の回復は望めないため,治療の第一目標は,維持透析や腎移植などが必要となる極度に腎機能が低下したESKD(end-stage kidney disease:末期腎不全)へ至ることを阻止すること,あるいはその時間を可能な限り遅らせることとなる.現在,本邦における維持透析患者数は30万人を超えている.これは,日本人全体の約425人に1人が維持透析を受けている状態であり,いまだその数は増加している.国民総医療費の4%弱が透析医療に投入されており,医療財源を圧迫する大きな問題となっている.そのため,生活習慣病との関連も深いこのCKDは,内科などの分野で既に広く取り組まれており,今や整形外科の一般診療においてもCKDを理解し,治療や投薬を行うことが重要となってきている.
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