視座
再生医療が目指すものは?
中村 雅也
1
Masaya NAKAMURA
1
1慶應義塾大学整形外科
pp.3
発行日 2017年1月25日
Published Date 2017/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200714
- 有料閲覧
- 文献概要
山中伸弥教授のノーベル賞受賞を機に,再生医療に対する関心が一気に高まり,これまで私たちが行ってきた脊髄再生医療への期待も大きくなりました.そんな社会的気運のなか,ある市民公開講座で聴衆の方から,「先生たちが目指している再生医療のゴールは何ですか? 人間の体の中の組織や臓器を再生医療で置き換えることができるようになれば,人類に不老不死は訪れるのでしょうか」と聞かれたことがあります.そのとき私は,「人間にとって死ねないことほど不幸せなことはないと思います.私が目指しているのは元気でぽっくりです」とお答えしました(傍点筆者).
日本は未曾有の超高齢社会を迎えています.平均寿命は男性が80歳,女性が86歳を超え,要支援・介護者は600万人に上り,20年後には900万人を超えると推計されています.その背景には,男性で約9年,女性では13年といわれる平均寿命と健康寿命の解離があります.この解離を埋めることこそが運動器再生医療の目指すところであり,それにより健康寿命を延伸できれば,寿命を全うするまで元気でやりたいことができる,すなわち元気でぽっくりにつながるわけです.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.