最新基礎科学/知っておきたい
脊髄再生は可能か
川端 走野
1
,
中村 雅也
1
Soya KAWABATA
1
,
Masaya NAKAMURA
1
1慶應義塾大学医学部整形外科学教室
pp.46-49
発行日 2016年1月25日
Published Date 2016/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200440
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はじめに
脊髄損傷は脊髄実質の損傷を契機に,損傷部以下の知覚・運動・自律神経系の麻痺を呈する病態である.本邦では毎年約5,000人の新規患者が発生しており,慢性期患者数は10〜20万人に達すると言われている.集学的医療の進歩により脊髄損傷患者の平均余命は健常者と遜色なくなったが,損傷した脊髄そのものに対する有効な治療法はいまだに確立されていない.20世紀初頭にスペインの神経解剖学者Ramon y Cajalが,「成体哺乳類の中枢神経系は損傷を受けると2度と再生しない」と述べて以来,この概念は長い間信じられてきた.しかし,神経科学の目覚ましい進歩により,Cajalの通説は覆されつつある.中枢神経系の再生医療の戦略として主に,神経幹/前駆細胞(neural stem/progenitor cells,以下NS/PCs)を用いた細胞移植療法と,それ以外の薬剤やリハビリテーションなどによる治療法の2つに大別される.本稿では,これまでわれわれが行ってきた基礎研究の概要と,脊髄再生の実現に向けた今後の展望について概説する.
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