誌上シンポジウム THAのアプローチ
緒言
尾﨑 誠
1
Makoto OSAKI
1
1長崎大学医学部整形外科
pp.788
発行日 2016年9月25日
Published Date 2016/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200617
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人工股関節置換術(THA)は,近代整形外科で最も成功した手術の1つである.Charnleyの人工股関節から50年以上が経過したが,デザインや材質の進歩,特にクロスリンクポリエチレンの登場は,摺動面の摩耗と人工股関節のゆるみを減少させ,近年の人工股関節の成績を劇的に向上させた.人工股関節の成績の向上は,比較的若年者を含めた人工股関節の適応拡大につながり,人工股関節の手術件数は年々増加している.一方で,ゆるみ以外の,脱臼,感染,骨折,痛みによる人工股関節の再置換頻度は,海外のレジストリーをみても以前とそれほど大きな差がなく,これらはさらなる人工股関節のデザインや材質,アプローチを含めた手術手技の改良により,今後克服すべき課題である.
人工股関節のアプローチに関する論争は,これまでも定期的に国内外の学会でトピックスとして取り上げられてきた.結局のところ,複数の術式に精通したうえで,それぞれの術者が最もストレスなく,患者の状態に合わせて最も安全,確実に手術が行えるアプローチを選択すればよい,という結論でこれまで決着がついてきたように思う.最近の約10年間では,より早い回復をめざした低侵襲手術,最小侵襲手術(MIS)に患者と医師の関心が集まり,皮切のサイズや位置,専用レトラクターの開発,軟部組織の展開や補強修復方法といったさまざまな改良が人工股関節のアプローチに加えられた.さらに股関節周囲の解剖学的な知見にも裏打ちされ,人工股関節のデザインや材質の進歩と同様に,人工股関節のアプローチもまた飛躍的に進歩している.
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