誌上シンポジウム MIS人工膝関節置換術の現状と展望
緒言
高井 信朗
1
1日本医科大学大学院医学研究科整形外科学分野
pp.490
発行日 2014年6月25日
Published Date 2014/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408103061
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人工膝関節置換術における最小侵襲手術については,そもそも「手術侵襲」とは何かということから始めなければならない.表層から深層に向かって,皮膚,皮下組織,筋,骨,骨髄が存在する.最小侵襲の点では小さな皮膚切開,少ない皮下組織の剝離,筋組織への最小侵襲,最少骨切除量,骨髄の温存ということになる.骨切除量に関しては人工関節の形状でその量が決まる以上,変えることができない.しかし,皮膚切開に関して言えば,従来の15~17cmに及ぶ切開幅よりは,8~10cmのほうが皮下組織の剝離量も当然少なくなるので痛みも少なく,心理的にもよい影響を与える.さらに切開が少なければ,落下細菌を補足する率も理論的には少なくなる.しかし,皮切の大きさに拘ったがために術後に手術創縁が発赤し,治癒が遅延し,感染の原因になる可能性がある.
内側広筋への侵襲を最小にするためにmini-midvastusアプローチ,mini-subvastusアプローチ,quadriceps-sparingアプローチが用いられているが,mini-midvastusアプローチとmini-subvastusアプローチの場合には手術終了時には5cm以上内側広筋が裂けている場合もあり,低侵襲とは言えない.その点,内側広筋の筋膜を全く開けないquadriceps-sparingアプローチは最小侵襲なアプローチと言えるが,日本人では内側広筋が膝蓋骨上極よりも近位で付着する症例が極めて稀であることから,このアプローチが適応できる例は10%前後であるとされている.
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