連載 特別講義 整形外科の歴史・6
「先天性」股関節脱臼の治療史―CDHからDDHへ
小野 啓郎
1
1大阪大学
pp.1034-1037
発行日 2013年10月25日
Published Date 2013/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102860
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先天性股関節脱臼の診断をめぐって:晩期診断とその治療
1930~40年代におけるPuttiの早期治療の呼びかけや,1950年代の北欧における新生児検診と早期治療の動きに,日本の整形外科医は呼応しなかったようにみえる.戦前のドイツ医学,戦後のアメリカ医学への一方的な傾倒とは異なる.なぜか? イタリアや北欧の整形外科学を師表と仰ぐことに抵抗があったのかもしれない.1950年代に始まる飯野・今田らの先駆的な乳幼児検診運動(後述)を除けば,1960年代に入っても,股関節脱臼は股の開きの悪さ(生後3カ月以降)や歩容の異常(幼児~年長児)で気づくことが多かった.つまり新生児期以後ということである.確定診断はX線撮影であるから,Lorenzの時代と変わらないことになる.
しかし,股関節外科の歴史から言えばSalter(1961),Pemberton(1965)あるいはPauwels(1930s,1976)らによって,治療が困難視された股関節形成不全(acetabular dysplasia)や大腿骨頭の求心性不良に迫る新しい技術が,次々に開発される時代でもあった.いずれも骨関節の成長を妨げない配慮,感染症や軟骨損傷を慮った関節外操作に工夫した跡がみられる(図40~42).
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