連載 特別講義 整形外科の歴史・5
「先天性」股関節脱臼の治療史―CDHからDDHへ
小野 啓郎
1
1大阪大学
pp.892-895
発行日 2013年9月25日
Published Date 2013/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102824
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dislocatable jointの本体
Ortolani's signやBarlow's signによる早期診断は,新生児股関節の「脱けやすさ・戻しやすさ」を証明する手技と解釈することができよう.診断画像によってその欠陥構造を明示できない以上は,機能不全として選別するほかない.実際に新生児の股関節には“接ぎ手”として際立った弱さがあるのか? その本体は何か?“接ぎ手”として弱い新生児期股関節を放置すると,脱臼に移行するのか?
こうした疑問に答えるには,X線形態学や超音波画像だけでは不十分である.一方で,股関節脱臼を観血的に整復した整形外科医の手術所見を巡っても解釈が分かれた.さまざまな成因論にもかかわらず術中の観察では,共通した骨関節の欠陥構造や,「形が機能に追いついていけない」anthropologic abnormalityを確認できなかった.多くの術者に共通した異常所見は,関節包の弛みだけであった.
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