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■癌幹細胞とは?
近年,癌の病態に関する研究として,“癌幹細胞”という概念が注目されている.癌の発生や維持,治療の抵抗性など,これまで無秩序に増殖し,異なる性質を獲得した腫瘍細胞の集団と思われていた癌組織が,そのもととなる幹細胞により制御されているという画期的な概念(cancer stem cell model)であるが,近年,種々の癌腫において癌幹細胞の研究が急速に発展しつつある.癌組織はheterogeneousな集団からなり,それぞれの細胞が無秩序に増殖して細胞塊を形成し,浸潤・転移する能力を持っているとする“stochastic/clonal evolution model”がこれまで提唱されてきた21).
“Cancer stem cell model”の概念は,癌組織の中でごく限られた細胞のみが細胞塊を形成し,浸潤・転移する能力を持っているとするもので,古くは1963年にBruceら5)や1977年にHamburgerら13)に提唱されていた.しかし近年の細胞表面マーカー解析技術や細胞分離技術の進歩により1997年にBonnetら4)が急性骨髄性白血病において,細胞表面マーカーであるCD34+CD38-細胞が癌幹細胞であることを同定し,正常の造血細胞と同様に白血病組織の中で,癌幹細胞を頂点とするヒエラルキーが存在することを証明し,この概念の正当性を示した4).さらに2003年にAl-Hajjら2)が乳癌においてCD44+CD24-/low細胞を癌幹細胞として同定してから,固形癌においても癌幹細胞の研究が注目され発展した.現在までに,大腸癌8),脳腫瘍24),膵臓癌19),胃癌28)などでその存在が報告されている.
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