最新基礎科学/知っておきたい
腱の形成と再生―Tenomodulin
宿南 知佐
1
1京都大学再生医科学研究所・生体分子設計学分野
pp.528-532
発行日 2011年6月25日
Published Date 2011/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102013
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■はじめに
骨と筋肉を連結する腱は,筋収縮によって生じた力を骨格に伝達し,運動器が一体となって機能するために欠かせない役割を果たしている.腱は強靱結合組織に分類され,縦に規則正しく1列に並ぶ腱細胞が産生した太いⅠ型コラーゲンの線維が平行に走向し,強靱な抗張力性を保持している.間葉系組織の中では,軟骨は例外的に無血管であることが知られているが,腱もまた靱帯とともに血管網の非常に乏しい組織である.したがって,いったん,腱が損傷されると瘢痕修復に移行し,機能的,生体力学的に十分に再生させることは困難で,運動器の中でも組織再生の重要な標的の1つであると考えられている.しかしながら,長い間,組織特異的分子マーカーが知られていなかったので,腱形成や再生の分子機序に関する研究は進んでいなかった.近年,筆者らは,Ⅱ型膜貫通糖蛋白質であるtenomodulin(Tnmd)をクローニングし,腱・靱帯などの強靱結合組織に特異的に発現することを報告した20).本稿では,成熟した腱細胞の分子マーカーであるTnmd分子の機能,発現局在,腱形成と再生における役割について最近の知見を概説する.
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