Japanese
English
腱・靱帯研究のフロンティア
(5)腱・靱帯の特異的分子マーカー
Specific molecular markers of tendons and ligaments
西崎 有利子
1
,
宿南 知佐
2
Yuriko NISHIZAKI
1
,
Chisa SHUKUNAMI
2
1横浜薬科大学薬学部臨床薬学科,機能形態学研究室
2広島大学大学院医系科学研究科,生体分子機能学
キーワード:
Tendon
,
Ligament
,
Tenomodulin
Keyword:
Tendon
,
Ligament
,
Tenomodulin
pp.833-838
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000001323
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
線維性結合組織は,皮下組織や粘膜固有層に存在する血管に富む疎性結合組織と腱・靱帯などの密性結合組織に分類される。密性結合組織は,その線維が一定方向に走行している腱・靱帯などの平行線維性結合組織,線維が二次元的に走行している筋膜・腱膜・強膜,三次元的に走行している真皮などの交織線維性結合組織とに分けられる。骨と骨格筋をつなぐ腱,骨と骨をつなぐ靱帯は,引っ張り方向に対して平行に走行する線維の強靱さにより,非常に大きな力学的負荷に耐えうる強度を有している。分化成熟を遂げて,縦方向に整然と並んだ腱・靱帯細胞は,主にⅠ型コラーゲン線維を産生し,腱・靱帯を形成する1)。腱や靱帯は血管が乏しく,大部分がコラーゲン線維からなることが強靱さに寄与しているが,そのために,いったん損傷すると,血管からの酸素や栄養の供給が十分でないことから治癒が難しいという特性を持つ。それゆえに,腱・靱帯の損傷に対する治療・再生を目指して,腱や靱帯の発生・分化の分子メカニズムを解明することが求められている。しかしながら,骨・軟骨・筋肉などに比べて,腱・靱帯の解析は立ち後れていた。それは,腱・靱帯細胞の採取や分化成熟を維持した状態での培養の困難さに加え,腱や靱帯細胞を特徴づける特異的な分子マーカーがなかなか見つからなかったことも一因であろう。
Copyright © 2020, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.