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あとがき
糸満 盛憲
pp.332
発行日 2009年3月25日
Published Date 2009/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101484
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戦争に明け暮れ,終わってみたら戦争による負の遺産と未曾有の恐慌以外何も残さなかったブッシュに替わって,バラク・オバマ氏がアメリカ合衆国の44代大統領に就任した.1月20日の就任式の模様を,テレビなどのメディアを通じてご覧になって感動した方は多いことと思う.あの世界一人種差別の激しい国での,黒人初の大統領の誕生というだけでも歴史的な快挙である.悲しいかな,わが国では首相がばたばたと政権を投げ出して夜間逃亡を繰り返し,国民の信を問うこともなく密室で政権与党が軽薄短小なたらい回しするなか,1年を通した長い選挙戦を勝ち抜いての大統領就任である.格と重みが違いすぎると,一人の日本国民として恥ずかしくさえ思う.
さてわが国では,大学医局の血の滲むような努力によって支えられてきた,地方の中小病院への医師の派遣ができなくなるきっかけを作った新臨床研修システムの導入で,図らずも本来の医師不足の実態が明るみに出ることになった.大学医局への医師の偏在を打破し,市中病院に分散を図ることをもくろんだ厚生労働省の意図は,若手医師の都市集中による偏在を助長して,もろくも崩れた.これを少しでも緩和しようと,初期研修の2年目は将来進む科で1年間研修することを可能にした.何のことはない.初期研修を1年に短縮したということである.また医学部定員が増員されたが,これが功を奏するのは10年以上も先のことである.それまでの間をどのように凌ぐかが大きな問題である.
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