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最近,ある企業主催の後期臨床研修合同セミナーなるものを経験した.日本整形外科学会(以下,日整会)に対して,今回は後期研修斡旋のため各専門科のコーナーを設けたので,学会でアピールするかどうかという打診があり,大阪では私が整形外科の紹介役を務めることになったのである.会場の雰囲気は異様の一言であった.関西を中心に全国から60~70の一般病院や大学病院までがブースを出し,主に来春4月から後期研修・入局予定の研修2期生が,目当てのブースを訪れる.一向に訪問者のない病院はたまりかねてパンフレットを入口で配布し,さらには一人ずつ熱っぽく問いかけて肩を抱いてブースに引率してゆく.研修内定者を得られない病院と,内定病院を決めかねている研修医の焦りが伝わってくる.どうしてこういう異常な世界が現出しているのか信じ難い思いであった.かっては医局に依存していたこれらの研修病院が,医局に代わって人材を得るために提示できる手段は,カリキュラムなどのきれいごとは抜きにして,給料と託児所完備くらいではないか.
日整会の紹介は日本(以下略)胸部外科学会,病理学会の後で,脳神経外科学会,医学放射線学会の前であった.私の大声に誘われたかたくさんの方が立ち見でも聞いておられたが,半数は暇な病院の関係者のようであった.私の講演では,研修医の売り手市場がいつまで続くと思うのか,なぜ研修システムが確立し,しかもこの3年間で改善が著しい大学病院管理型研修をまず選ばないで,こんな会場をうろうろしているのか,今春入局した研修1期生と同じ選択行動をとると将来,供給過多でダンピングの対象になること,これから一層需要が増す技術修練の必要な科が勧められること,専門医資格以外に博士号も希望する35%の研修医のために大学では社会人大学院入学の門戸が広がりつつあることなどを主に述べた.整形外科に関してアピールした点は,今後患者さんの数と医師の需要がどうしようもなく増加する,将来開業しやすい,リハビリテーション医やリウマチ医への内科的特化が可能,手術は守備範囲が広く型通りの術式が少ない,手術全てにアイディアと工夫が求められる,技術修練は慌てる必要がないなどで,そのほかにも思いつく限りを述べた.しかしいずれにしてもアメリカのような,医師が症例から医療事故顛末まですべてを含めた分厚い履歴書(CV)を作成し,個別にアタックしなければ就職もできない不信の状況が作られつつあること,その間隙を縫うように,市場原理の利ざやかせぎで,こういった斡旋企業がすでに100社以上も名乗りを挙げている状況は医療破壊以外の何物でもないこと,などを再確認させられた思いである.これまで長年積み上げてきた,個々の医師の技術を担保し,リスクマネジメントを行い,僻地医療を維持してきた,極めて精緻な医局の役割を瓦解させた責任はどこにあるのか.一挙に市場原理の渦中に放り出された研修医と病院の焦りと疑念,あるいは怒りが燃え上がっているようなフェア会場であった.
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