ポイント
貧乏がもたらすもの
二木 シズヱ
1
1一宮市民病院看護部
pp.105
発行日 1966年1月1日
Published Date 1966/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912613
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寄宿舎附設の共同浴場がこわれたので,清潔感を好む私たちは,入浴で味わう解放感と疲労をとり除くために,2人の若い看護婦さんと銭湯にいった。風呂賃28円也,3人で84円,手取り1,8000円の給料とりである看護婦さんは,溜息とともに私の表情をみつめているのを感じた。「なかなか一般人は風呂にも入れないね。大家族ならどうするかしら」暗黙のうちに3人3様,28円をめぐって暗い考えに覆われたことは事実である。
銭湯のなかはひっそりして,広々としていた。「あら入っている人少ないね」「普通の月給とりじゃあ,風呂賃28円高すぎるね,そんなに毎日入れないよね」若い人たちのこんな会話を聞きながら,ながい間の寄宿舎生活は,この世離れの人をつくり,大きいマイナス面を残してゆくものだと,今さらのごとく感じさせられる。寄宿舎生活をしていると,貧しい温室育ちとなる。物価の値上げも直接に身にしみない。
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