ナースの作文
半年の臨床がもたらしたもの
柴 愛子
1
1国立霞ケ浦病院
pp.52-53
発行日 1958年3月15日
Published Date 1958/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910564
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優ちやん,お元気?こちらも相変らずです。と一応書き出しましても,相変らずというのは,冬が真近になつて銀杏の葉が美しい舞をみせてくれることと,病棟裏のプラタナスの枯葉が,カサカサと地面を這う音が聞える季節が3度訪れたという自然の動きのことなのです。もう1年近くもお話合もできなかつたのですもの。私だつて自分の心の変遷を考えれば,軽はずみにたつた1人の親友と呼ぶべき貴女に,相変らず等という言葉は送れないのです。
優ちやん,貴女が新らしい夢と希望を持つて前途洋々と勉学にいそしんでいることを想像すると,私は今日この気持を伝えたい便りを書くペンの滑りが鈍るのです。でも私の下らない愚痴ももつともらしく黙つて聞いて下さるのもきつと優ちやん1人でしようし,かつて看護学院時代3年間という年月を同じ屋根の下で生活し悩みを共にした私たちですもの。今の優ちやにもきつとお判りになつて戴けるわね。優ちやん,ほら,ごめんなさい,こんなにインクがしみちやつて。こうしていても,くやしいかの悲しいのか判らない涙がやつてきて私を苦しめるのです。
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