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2003年5月に金沢で開催された第76回日本整形外科学会学術総会の前日,日整会代議員会が開催された.そこでいわば緊急議題として「日整会認定脊椎脊髄病医」の制定が決定した.近年の日整会執行部の柔軟で実行力のある一面を見せた決定であった一方,また「認定医」を増やすのか,という率直な疑問がわいてくる.いままでのリウマチ医もスポーツ医も正直な話,役に立っていない肩書きである.リウマチ医はリウマチ学会のリウマチ医がより重みを持ち,スポーツ医も日本体育協会の認定医が幅を利かせている現状である.それはなぜか? リウマチ医もスポーツ医もその制度を実際に生かすために,対象であるリウマチ患者やスポーツマンに浸透するようなアピールに欠けているからである.
「脊椎脊髄病医」も他学会のそれへの対抗策のようである.対抗しないよりもましかもしれない.しかし再び患者にアピールできない認定医にとどまれば「認定医」自体の意義が問われる.また患者にとって「日本整形外科学会」認定医であることがわからなければ,「認定医」のみが強調され,「日整会」のもくろみが成功するとは思えない.日整会として大切なことは,整形外科を訪れた脊椎脊髄障害患者の大多数が,保存的治療により早期に満足できる状態に復帰できるような,日整会の整形外科医全員に対する技術と心がけの教育を徹底することである.患者に「整形外科にかかれば手術をせずに,たいていはよくなる」という社会的な常識を植えつけることである.整形外科医に必要なことは,手術を必要としない患者に対し,自らが「運動器疾患」の専門医としての自覚を持ち,正しい判断と早期の効果的な治療を下せることである.同時に手術を要する少数の患者を適切に見極め,患者に十分な説明をし,安心して任せられる脊椎脊髄手術の専門病院を紹介することである.
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