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2005年6月に新しい勤務地に転勤になり,赴任したその日から5年次の学生の臨床配属実習(ポリクリ)が待っていた.いまではポリクリという言葉を使う大学はだんだん少なくなり,BST(bed side teaching)とかBSL(bed side learning)という言葉を使う大学が多くなっているとのことであるが,香川ではポリクリという言葉が生きている.学生にとってこのポリクリは医学部の学生としての一大イベントであるから,何とか魅力的なものにしたいと考えた.思い起こせば自分が学生の頃はあまり授業に出なかったが,たとえ出席した授業であってもその記憶はあまりない.しかしながらこのポリクリのいくつかの光景だけはなぜか鮮明に記憶しているものがある.はじめて医学生が患者さんと接する診療の幕開けのようなものであるから,やはり自分を含めて印象深いものがあるのであろう.
自分が受けたポリクリを思い出してみると,それぞれの臨床科によって様々なパターンがあった.ある外科系の科では,ポリクリ学生は当時の研修医の1日のスケジュールと全く同じ行動をとり,朝早くから深夜の手術まで付き合わされて,その合間合間に小講義があった.ある内科系の科では,学生が教授の前に起立させられて難しい質問をされ,答えられないと否応なしに叱責罵倒された.また厳しく出席をチェックする診療科もあったし,全く学生が放置される科もあった.2週間の間全く出席しなくても単位がもらえる科があり,その科の卒業試験で不合格になるものはいなかった.どんなポリクリがいいのか考えてみたが,やはり最近の研修医や学生の気質を考えてみると,びしびし怒鳴ったり叱責するのはまずい.彼らは怒られることに慣れていない.また長時間の拘束も時代の流れに合わない.労働基準法を楯に研修医に5時に帰りなさいと奨励する時代である.かといって放置しっぱなしでは,昔は一部の学生は喜んだが,今や必ず真面目な学生からちゃんと教育せよとクレームがつくことは間違いない.
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