綜説—今月の臨床
進行胃癌に対するMTX/5-FU時間差投与療法
小西 敏郎
1
,
島津 久明
2
1東京大学医学部第2外科
2鹿児島大学医学部第1外科
pp.85-92
発行日 1993年1月20日
Published Date 1993/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905115
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Ⅰ.はじめに
近年,消化器悪性腫瘍の化学療法は多剤併用療法が主流となってきているが,最近biochemicalmodulation1,2)の考えに基づいた多剤併用療法が注目されている.従来の多剤併用療法では,薬剤の相互の効果増強の作用機序を理論的に説明できる薬剤の組み合わせは少なかった.これに対しbiochemical modulationは,作用機序が生化学的あるいは薬理学的に明らかな薬剤(modulator)を併用投与することにより,制がん剤(effector)の抗腫瘍効果の増強や副作用の軽減を図る多剤併用療法であり,biomodulation3)とも呼ばれている.modulatorには制がん剤以外の薬剤も含まれるが,理論的に合理的な療法である。
biochemical modulationに基づいた化学療法は,1966年Djerassiらにより白血病の治療に提唱された大量メソトレキセート(methotrex-ate;MTX)の投与後に,MTXの拮抗剤であるロイコボリン(leucovorin;LV)を投与する救援療法(rescue therapy)4)が最初であると考えられている.
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