今月の主題 急性期脳卒中の臨床
救急時の取り扱いかた
移送の適応と注意
金谷 春之
1
1岩手医大脳神経外科
pp.16-18
発行日 1978年1月10日
Published Date 1978/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207694
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
本邦における脳血管疾患の死亡総数は,年間約18万人であり,本邦死因の第1位にある.このうち,死亡の場所に関する厚生省の人口動態統計(表1)によれば,自宅死亡は最近やや減っているものの,昭和48年では死亡総数の67%であり,一方,病院死亡はわずかに26.5%である.このように急性な経過をとり,しかも最重症型に属する疾患の大部分が自宅にて死亡していることは,先進国としては諸外国にもその類例を見ないところである.その原因としては種々あるが,これら脳血管疾患は高齢者に多いこと,従来は治療成績が悪く,「不治の病」的な考えがその主たる原因と思う.一方,患者を動かすことが危険であるとする考えが,医師側にも患者側にも,今日なお根強く存在していることも事実である,昭和37年,筆者が本邦ではじめて脳卒中急性期の移送の安全性を指摘し2),その後経験を重ね,その都度,紙上にその成績を発表してきた3〜6)が,その間,諸家の追試もなされ7〜9),今日,移送の安全性については大方の了解されるところとなった.しかし「移送-入院」といった考え方が,現実においては未だ普遍化されていない現状である.今日の脳卒中の医療水準からして,脳卒中は助かる疾患であるといえるが,患家治療が主体をなす現状では,多くの助かるべき人が失われ,本邦死因の第1位にあることは,けだし当然の結果であり,患家治療から入院治療への転換は緊急の課題といえよう.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.