臨床外科交見室
“ツッペル”とは
佐藤 裕
1
Hiroshi SATOU
1
1北九州市立若松病院外科
pp.240
発行日 2001年2月20日
Published Date 2001/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904384
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術中鈍的剥離を進める際,「ツッペル」を用いる外科医は多いと思う.ところがこの「ツッペル」はどう綴るかについては正しくは知られていないようである.筆者も長年疑問に思い,先輩諸氏に尋ねたり文献調査を続けてきたが,不明のままであった.最近も数件の問い合わせがあり,ドイツ語辞典にある[Tupfer:(柄の先に綿球ないし折り畳んだ布を取り付けた)“斑点模様を画く道具”]が,おそらくそれに相当するのではないかと回答していた.ところがごく最近,胆道外科の先駆者であったドイツのHans Kehr(1862〜1916年)の胆道外科手術書のなかに「Tupfer」という言葉を見つけ,長年の疑問が一挙に氷解した次第である.この論文中に「Tupfer」の作り方の図解(図)があり,100×45(cm)のガーゼをまず長軸方向に三つ重ねに折り,さらにこれを端から折っていき,最終的に25×15(cm)の大きさにしたものを「Tupfer(gaze)」と呼んでいるのである.Kehrはこの「Tupfergaze」を,今日の我々と同じように血液や分泌物を吸収したり,腹腔内を拭うために用いている.置き忘れを防ぐために,四隅に黒糸の目印を付けることを勧めている一方で,「腹腔内遺残」をなくするために,術者は言うに及ぼず特に助手が細心の注意を払わねばならないとしている.
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