連載企画「外科学温故知新」によせて・11
食道外科:ブールハーヴェ(Boerhaave)症候群
佐藤 裕
1,2
Hiroshi SATOU
1,2
1誠心会井上病院外科
2日本医史学会
pp.383-385
発行日 2007年3月20日
Published Date 2007/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101237
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特発性食道破裂(idiopathic esophageal perforation)は,その病態の最初の報告者であるオランダのハーマン・ブールハーヴェに因んで「ブールハーヴェ症候群(Boerhaave's syndrome)」という冠名で呼ばれている.すなわち,1724年にブールハーヴェが,大食後に嘔吐してすぐに激しい胸痛を訴え,さらに呼吸困難や皮下気腫を併発してショック状態に陥って死に至った患者の解剖を行ったところ,食道下部に新鮮な裂創を認めたことを報告したのであった.この「ブールハーヴェ症候群」は,食道外科を専門にする者にとっては多分に聞き慣れた病名であろうと思われるが,その名祖(なおや)となったHerman Boerhaave(1668~1738:図1)が18世紀の前半にオランダのライデン大学にあって当代随一の名医と詠われた臨床医兼医育者であったということは知られていないようである.そこで,今回はこのブールハーヴェについて,彼のなした業績とその人物像を紹介する.
Herman Boerhaaveは1668年にライデン近郊の街で牧師の子として生まれた.1684年に地元のライデン大学(1575年創立)で神学や哲学を学んだのち,医学を志してハイデルワイク(Harderwijk)大学に転出し,そこで学位を取得している.1701年にライデン大学講師となり,1709年には同大学の植物学教授となった.さらに化学の講義も担当するようになり,1714年には内科学教授に任ぜられ,そののちは「天性の臨床家(診断家)」という名声を得た(1717年には理論医学の教授に推されている).
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