外科医に必要な脳神経外科common diseaseの知識・5
三叉神経痛,顔面けいれん
松本 健五
1
Kengo MATSUMOTO
1
1岡山大学医学部脳神経外科
pp.1590-1592
発行日 2000年12月20日
Published Date 2000/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904332
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疾患の概念
三叉神経痛,顔面けいれんはともに三叉神経,顔面神経が脳幹から出て数mm以内のところ,すなわちroot entry zone(根侵入部,運動神経の場合はroot exit zone:REZ)で血管などにより圧迫されることで痛み,けいれんが生ずる症候群である.その部では中枢ミエリンが末梢ミエリンに移行する部位で,機械的圧迫に弱い部分であり,容易に脱髄が起こって隣接した軸索との接触をもたらす.REZでは軸索はシュワン細胞に被包されていない.圧迫の原因のほとんどは動脈硬化性変化を伴った屈曲,蛇行した脳血管である.圧迫の原因となる責任血管は三叉神経痛の場合上小脳動脈が最も多く,顔面けいれんの場合前下小脳動脈,後下小脳動脈,椎骨動脈があげられる.血管以外の原因として稀に腫瘍,脳動静脈奇形があげられる.三叉神経痛(trigeminal neuralgia:TN)は数秒間続く発作性の乱刺痛で,しばしば感覚刺激により誘発され,顔面の一側の三叉神経の1枝領域またはそれ以上の分枝領域に限局し,神経学的障害を伴わない.また顔面けいれんは一側のみの顔面神経による神経支配を受ける筋肉の間歇性,無痛性,不随意性,攣縮性収縮状態である.本症は眼輪筋の収縮で始まり,徐々に顔面の半側すべてに広がり,頻度が増加して患側の開眼が困難となる.両者とも発作性,反復性,不随意的な神経刺激症状を病態とする類似疾患である.
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