メディカルエッセー 『航跡』・46
診療記録は一体誰のもの?
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1428-1429
発行日 2000年11月20日
Published Date 2000/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904297
- 有料閲覧
- 文献概要
ごく最近のことであるが,ニッポンでは未だに「カルテ公開」の是非が論じられていると風聞した.「カルテ公開」というのは,カルテの内容を当の本人である患者に閲覧してもらうという意味なのだそうだ.
「ニッポンでも,ようやく診療記録を患者に見せるようになったよ」とアメリカンの同僚外科教授に話すと,「ヘェー,今までよく患者が文句を言わずにだまっていたもんだね.そんなに医者に都合のよい国なら,ニッポンに移って外科医を続けたいよ」と感嘆するのである.米国では自身について診療上のあるゆる事実を知る患者の権利が尊重されるようになって半世紀になる.当初はアメリカでも診療記録は,いまのニッポン同様にすべて医師あるいは病院に属して患者には閲覧を許していなかった.半世紀の間,無数の医療訴訟裁判を重ねるうちに,患者の知る権利が法的に確立され,今日に至っては,患者は入院・外来のカルテは勿論,X線フィルム,病理標本の読影記録など,すべての記録にアクセスする権利を法的に保証されている.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.