特集 薬物療法マニュアル
Ⅶ.併存病態の理解と薬物療法
4.消化器疾患
虚血性大腸炎
桜井 洋一
1
,
落合 正宏
1
,
船曵 孝彦
1
Yoichi SAKURAI
1
1藤田保健衛生大学医学部消化器外科第3科
pp.446-448
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903914
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成因
虚血性大腸炎は,1966年にMarstonら1)により,主幹動脈に基質的な閉塞がなく,腸管の虚血により引き起こされた可逆的な炎症性病変と定義されている,一般に高血圧症,動脈硬化症,心疾息,糖尿病などの心血管障害のある高齢者にみられる大腸血流障害による区域性腸炎である.下行結腸からS状結腸に多く,血流障害の原因としては血管側の要因と腸管側の要因がある.Marstonらは古典的に壊死型,狭窄型,一過性型の3型に分類し,現在でも用いられているが,最近では壊死型を除き狭窄型,一過性型の2型に分けることもある.また腸管壁の病変が可逆的である虚血性大腸炎と不可逆的である非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:以下,NOMI)2)とに分類されることもある.厚生省研究班アンケート調査3)によれば各病型の頻度は一過性が65.7%,狭窄型が24.1%,壊死型が10.2%と一過性型が最も多い.壊死型は急激に起こる高度の血流障害によるもので,比較的稀であり,むしろ腸梗塞の範疇に入れられるべきものである.腹痛が強く,持続性,進行性で腸壁全層の壊死を示す.穿孔,腹膜炎の症状(腹部全体の庄痛,Blumberg徴候,筋性防御)がみられる.腹部単純X線検査で麻痺性腸閉塞が認められる.
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