特集 薬物療法マニュアル
Ⅶ.併存病態の理解と薬物療法
3.呼吸器疾患
肺結核
坂谷 光則
1
Mitsunori SAKATANI
1
1国立療養所近畿中央病院
pp.422-423
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903906
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はじめに
結核菌は生体の各臓器に病巣を作りうるが,圧倒的に多いのは呼吸器すなわち肺結核(気管・気管支結核と胸膜炎を含む)である.理由は結核の感染形式が飛沫核感染,つまり患者が咳やくしゃみをしたときに口から出る多数のしぶき(飛沫)の中に菌が潜んでおり,水分が蒸散し(5μサイズの飛沫核となる),その後しばらく空気中に漂っている間に,周囲の人間が呼吸とともに肺内奥深く吸い込むことによって感染するからである.菌陽性の膿や胸水を介しての,MRSAのような接触感染はまずないものと考えてよい.本邦での代表的な細菌性伝染病である.
肺結核とよく似た疾患に肺非定型抗酸菌症がある.環境由来の非結核性抗酸菌が原因菌(したがって伝染病ではない)の呼吸器感染症で,検出される菌の種類を正確に同定することで鑑別できる.最近では肺結核4例に対し1例の割合で発見される.
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