特集 薬物療法マニュアル
Ⅴ.悪性腫瘍の薬物療法
乳癌
池田 正
1
,
正村 滋
1
,
松井 哲
1
,
北条 隆
1
,
川口 正春
1
,
高山 伸
1
,
戸倉 英之
1
,
宮部 理香
1
,
北島 政樹
1
Tadashi IKEDA
1
1慶應義塾大学医学部外科
pp.317-321
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903870
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病態
乳癌の病態に関する考え方は歴史的にみて転換期にあると思われる.すなわち,古典的にはハルステッド流の考え方として癌は局所にできて,そこからリンパ流に乗り,リンパ管,リンパ節を経て全身に散らばっていくという考え方が主流であった.ところが1980年代になり,FisherらがNSABP trialの結果を元に,癌は血流に乗ってatrandomに全身に散らばるために,臨床的に触知するような癌はすでに全身病であるとの考えを提示し,広く受け入れられていた1).ごく最近になり,癌からのリンパ流を最初に受け入れるリンパ節(sentinel lymph node)を生検することにより,腋窩リンパ節転移を高率に予測しうることが報告されるようになったことや2),術後照射を所属リンパ節にかけることにより予後が改善されたことなどが報告されるようになり3,4),臨床的な癌の中にも局所にとどまる癌,すなわち局所療法により治癒する癌の存在が広く認められつつある.ただ,これらは原発癌に対する考え方であり,再発乳癌の場合には当然全身病であり,かつpalliativeな治療とならざるをえない.乳癌を局所病と考えた場合には全身治療である薬物療法の適応は予後との関係で決まり,全身病と考えた場合には最初から薬物療法が主体となる.
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