メディカルエッセー 『航跡』・18
カナダ横断30日間講演旅行(5)—モントリオールからオタワへ
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.222-223
発行日 1998年2月20日
Published Date 1998/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903113
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モントリオール駅から首都オタワ行きの特急列車に乗り,停車場を離れていく車窓から手を振ってガットマン夫妻に別れを告げた.2時間足らずの旅であったが,途中には紅葉の渓谷を抜けるところもあって退屈はしなかった.驚いたことにファーストクラスの乗客には丁度国際線の飛行機の旅のように,湯気が立ちのぼるスープのついた食事が席に配られるのであった.もちろん料金はいらない.汽車の旅で上げ膳据え膳ははじめてのことであった.オタワに着くと東オタワ小児病院小児外科部長のマーサー博士夫妻が出迎えてくれた.カナダ議会のすぐ隣にそびえ立つ,古城のごときホテルシャトーローリエに宿がとってあった.例によってペントハウスフロアには,エレベーターの鍵穴に合う特別のキーを持ったスペシャルゲストだけが到達できるようになっている.このフロアではたとえ一夜の客であっても「ミスター」だの「サー」とは呼ばない.受付嬢,クラーク,ウエイトレス,メイドに至るまで「ドクターキムラ」と名前を呼ぶように躾けられている.部屋に入ると総シルクの寝具や年季の入ったクラシックな家具調度はともかくも,灰皿に載ったマッチに金文字でDr.Kimuraと印刷してあったのには魂消た.あれもこれもマクロード家がスポンサーであればのこと,自前で泊まるにはかなりの勇気がいるわいと思いながら超ゴージャスな2晩の滞在をエンジョイした.
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