特集 外来診療・小外科マニュアル
Ⅸ.乳幼児の外来外科疾患
121.臍炎
平野 敬八郎
1
Keihachirō HIRANO
1
1東邦大学医学部外科学第1講座
pp.316-317
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902998
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疾患の概念
出生直後に結紮切断された臍帯はおよそ1週で乾燥脱落し,脱落創は2週以内には上皮化して通常の臍ができる.臍帯脱落後の処置が不適切で不潔な場合には,脱落創に感染が及び,発赤・腫脹・痛みを伴う“臍炎”omphalitisの症状を呈する.“臍炎”になれば臍は湿潤化して膿性分泌物や軽度の出血を認め臭いを伴う.炎症が持続して慢性化すれば臍窩に小豆大〜大豆大の淡紅色の軟らかくて丸い“臍肉芽腫”umbilical granulomaの形成を認めるようになり,生後2〜4週頃までに“臍肉芽腫”を主訴に外来を受診することがしばしばある(図1).
炎症が臍周囲に及んで“蜂窩織炎”や“腹壁膿瘍”,さらに“腹膜炎”にまで進展したり,臍静脈を経て全身性に感染が波及し“肝膿瘍”や“敗血症”にまで至る可能性もあるので,“臍炎”に遭遇したときには局所にのみ目を奪われずに,全身状態を注意深く観察することが大切である.また少し年齢の高い児に見られる“臍肉芽腫”には,“卵黄腸管遺残”(図2)や“尿膜管遺残”(図3)に起因する臍底部の瘻孔が慢性炎症の原因となっている場合がしばしばあり,これらの先天奇形の存在もチェックする必要がある.
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