臨床外科交見室
外科医とQOL
木村 秀幸
1
1岡山済生会総合病院外科
pp.1307
発行日 1997年10月20日
Published Date 1997/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902863
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私が医師になった25年前は,医学,中でも外科学はquantity of lifeを追求していた.それゆえ手術は拡大郭清へと突き進み,その結果,直腸癌手術では,性機能障害や排尿機能障害が問題となった.その後神経温存手術が始まったが,当初は,郭清度を控えて神経を残すか,神経を切除しても郭清度を上げるかという選択だった.この頃に外科臨床の場にQOL(quality of life—生命の質,生活の質)という言葉が持ち込まれ始めた.
病院のベッドに寝たきりで,点滴注射にたよって命を長らえるような延命医療に対する反省からQOLは注目されたが,私たち外科医は,手術方法などによる差異を問うということに重点をおき,その結果,身体的QOLを追求することに偏りがちだった.しかし,QOLには心理的,社会的,宗教的側面のあることも忘れてはならない.また,その評価はあくまでも,本人の主観によらなければならない.
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