特集 Q&A 自動吻合器・縫合器の安全,有効な使い方
(Q22)Double Stapling Anastomosis(DSA)で縫合不全を起こさないコツは.
森田 隆幸
1
,
中村 文彦
1
,
今 充
2
Takayuki MORITA
1
1弘前大学医学部第2外科
2財団法人双仁会厚生病院
pp.1040-1041
発行日 1997年8月20日
Published Date 1997/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902811
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- 文献概要
縫合不全をきたす要因は全身的なものとして,イレウス,低栄養状態,動脈硬化や糖尿病による血管病変,術中,術後の大量出血,ステロイド長期投与,放射線照射などがある.また,局所的な因子としては吻合操作の不慣れなどによる不完全吻合,腸管接合時の過度の締めつけによる組織の挫滅,急激な内圧の上昇,骨盤腔内の感染,MRSAや虚血性腸炎などの腸管の炎症などが挙げられる.一般的な吻合と同様に,全身状態の改善,腸管清浄とくに腸管内容の除去を目的にしたmechanical preparationは縫合不全防止の原則である.
Double stapling anastomosis(DSA)の普及により,下部直腸癌に対しても肛門括約筋温存手術が積極的に採用されるようになったが,逆に,縫合不全のriskも増すと考えなければならない.その理由の第1として,肛門管近傍に近づくほど腸管壁が厚くなることが挙げられる.直腸断端の閉鎖には,TA®55(オートスーチャージャパン)やTL60,TLH30(エチコンエンドサージェリー)を用いているが,炎症性浮腫などにより腸管の肥厚がある場合には,リニヤーステイプラーでの過度の締めつけにより組織が挫滅され,dog earのstaple lineから漏れを生じることがある.TL60,TLH 30では用手的に締めつけの加減ができるなどの利点もあり,各種リニヤーステイプラーの特性をよく理解し使用すべきである.
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