メディカルエッセー 『航跡』・6
産学協同
木村 健
1
1アイオワ大学
pp.224-225
発行日 1997年2月20日
Published Date 1997/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902650
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日本から衛星中継で送られて来るテレビ番組で,京大のスタッフが治験にまつわる原稿料や治験企画書作成の代金として受取った現金が収賄にあたるとして検察に逮捕されたというニュースを聞いて,一瞬わが耳を疑った.追いかけるようにファックスで送られて来た新聞記事によると,「公」の仕事に「私」から現金を受取ったのがけしからぬのだという.日本を離れて十年にもなると,「公」だの「私」だのという議論がまるで他の惑星の出来事のように思われる.自由の国アメリカに住んでいると,戦後自由民主の国になったはずの日本が,いかに不自由かよくわかる.
たとえば警察官は日本でもアメリカでも公務員である.だが,アメリカでは一旦公務たる勤務時間が終ると只の人に戻る.只の人になった警官が警備会社の夜勤という二つ目の職を持つのは本人の自由として法的に保障されている.小学校の先生も公務員であるが,午後三時の授業が終ると只の人である.只の人だから,その職業的能力を生かして,家庭教師のアルバイトをして罰せられる筋合いはない.ただし,自分の勤める学校の生徒は教えてはならないという規則があるから,教えられるのは他の学校に通うこどもに限るのではあるが.
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