私の工夫—手術・処置・手順・27
外科領域における大網充填法
佐藤 友信
1
Tomonobu SATO
1
1神戸逓信病院外科
pp.54
発行日 1997年1月20日
Published Date 1997/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902617
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大網は単に脂肪組織ではなく,感染に対して防御作用を有する事を述べた論文は少ないが1),われわれは積極的に大網を利用し,腹部や胸部の手術時に感染創や死腔を充填するのに利用している.大網応用の利点は,①死腔を減らす,②感染に対して防御作用を有する,③死腔にたまってくる滲出液を吸収するといったことから創傷感染を防ぎ,創傷治癒を促進するという点である.
具体例として,はじめに直腸切断後の骨盤底に充填する方法について述べる.そのまま大網を骨盤底まで降ろす事はまず不可能で,横行結腸からの遊離を必要とする.肝彎曲部から少し正中寄りの横行結腸付着部から遊離をはじめ,左側の脾彎曲部の方へ遊離していく.大網の栄養血管は胃大網動静脈から直角に近い角度で数本でているが,出来れば最低2本は残す.とくに骨盤底に充填する際は出来る限り脾彎曲部近くまで遊離しておくのがよい.遊離した大網を,人工肛門としたS状結腸の内側に沿ってゆったりと骨盤底に充填する.無理に一番底位まで大網を降ろさなくても,膀胱の辺りで良い.大網を拡げて腹膜の切離縁と大網とを数か所縫合固定し,骨盤底へ小腸が入り込まないようにする.固定の際,栄養血管を損傷しないように十分注意する.この大網充填によって直腸切除により生じた腹膜欠損部はほぼ覆う事が可能となる.
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