特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅲ.注意すべき状態の術前患者管理
肥満の患者
宮沢 幸正
1
,
落合 武徳
1
,
川村 功
1
,
磯野 可一
1
1千葉大学医学部第2外科
pp.394-395
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902531
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術前検査と重症度の判定
肥満とは体内に脂肪が過剰に蓄積した状態と定義されている.肥満の判定法としては,①標準体重法,②体格指数,③体組成の分析による体脂肪量測定法等があるが,詳細は他文献1)を参照していただきたい.肥満患者の術前判定として最も重要なことは,その患者が単純性肥満か症候性肥満かを診断することである.前者は特別な原因疾患なしに過食と運動不足で起こるものであるが,後者は内分泌疾患等の原因疾想を認めるもので,症候性肥満ではまずその原因疾患を治療することが必要である.また単純性肥満においても最近では臍の高さでのCT像により内臓脂肪(visceralfat:V)と皮下脂肪(subcutaneous fat:S)の比をとるV/S比を用い,V/S比0.4以上を内臓脂肪型肥満,0.4未満を皮下脂肪型肥満と分類し,内臓脂肪型肥満のほうが合併症が多いとされており2),単に体重の多い少ないのみでなく脂肪の分布に対する評価も必要とされる.また肥満患者においては呼吸器系,循環器系,内分泌・代謝系疾患の合併が多く,これらの検索を行う必要がある.特に男性の高度肥満患者においては突然死の原因となる睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syn-drome)のチェックは必要であり,そのためにsleep studyを行う必要がある.
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