詳説 皮膚割線の局所解剖・1【新連載】
女性解剖体における顕出例の示説—体幹から肩・腋窩にかけて
伊藤 由美子
1
,
佐藤 達夫
2
1文化服装学院・服装解剖学
2東京医科歯科大学医学部・第2解剖学
pp.1185-1191
発行日 1996年9月20日
Published Date 1996/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902403
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はじめに
皮膚にまるい小孔を穿つと,楕円形の孔ができる.その長軸の配列方向は皮膚の緊張と一致するので,LangerやKocherにより「皮膚割線」として手術時の皮切の方向として推奨されてきたが,近年,皺線に沿った皮切のほうが瘢痕形成が少ないことも主張されるようになった1).しかし,幼若青年層では皺線の設定が困難で,その活用には難があり,皮膚割線の再検討も必要と思われる.しかしながら,皮膚割線図は報告者により結果に差がみられ2),それが人種差にもとづくのか個体差によるのかも明確でない.ただ,従来の報告例の写真と挿図を通覧すると,割線を発現させるために穿った孔の密度がかならずしも高いとはいえないように思われる.
筆者らは,衣服製作に重要な皮膚の局所解剖学的研究を行ってきたが,特に体幹と四肢の移行部のように,移動性ならびに形の変化の著しい部位について,皮膚割線と皺線ならびに浅層筋の筋束方向の関連を調査している.その第一段階として,女性解剖実習体1体の頭部を除く左側半について,従来よりも緻密に皮膚割線を出現させた.もちろん,最少例数という難はあるが,現在,最も詳しい調査例と思われるので,示説して外科医の参考に供したい.なお,図が多数となる関係から,(1)体幹から肩・腋窩にかけて,(2)骨盤部から下肢にかけて,(3)腋窩から上肢にかけて,の3回に分割して示説することにする.
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