綜説・今月の臨床
再発乳癌の治療
元村 和由
1
,
野口 眞三郎
1
,
稲治 英生
1
,
小山 博記
1
Kazuyoshi MOTOMURA
1
1大阪府立成人病センター外科
pp.1341-1352
発行日 1995年10月20日
Published Date 1995/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902002
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I.はじめに
乳癌の再発に対していかなる方法で治療を行おうとも再発後の平均生存期間は2〜3年で,10年以上の生存が得られるものは10%程度に過ぎないとされ,治癒にいたる例はごく少数である1).この事実を踏まえ,各々の病態によりいかに最小の毒性で最大の効果を得て症状の軽減とquality of life(QOL)の向上をはかることができるかが治療法を選ぶ鍵となる.また,単一の治療法で仮に効果が得られても,多くはいずれprogressive disease(PD)となるためにsecond line,third lineの治療を念頭に置いてfirst lineの治療を選択すべきである.
治療法選択の重要な因子の1つに再発初発部位がある.再発後の化学療法の有効率は軟部組織で55%,内臓病変で40%と再発部位で差を生じる.これについてKambyら2)は,(1)再発診断時の腫瘍量は軟部組織のものでは少なく,内臓病変で多い.癌細胞は指数関数的に増殖し,宿主の栄養供給が減少すれば休止する.したがって,増殖の盛んな時期にある軟部組織の小腫瘍に対し化学療法はより効果的で,細胞増殖がplateauになりつつある内臓病変には効きにくい.(2)軟部組織の再発病巣の計測は内臓病変に比べ容易であり,したがって有効率が内臓病変より高めに評価されるため,と説明している.
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