臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・9
敗血症性ショックに対する抗サイトカイン療法の可能性
相浦 浩一
1
,
北島 政樹
2
Koichi AIURA
1
1川崎市立川崎病院外科
2慶應義塾大学医学部外科
pp.1617-1624
発行日 1994年12月20日
Published Date 1994/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901742
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はじめに
細菌あるいはその菌体成分によって引き起こされる敗血症は,しばしば患者を重篤なショックに陥れ,多臓器障害へと進展することも決して珍しくない.強力な抗生剤や全身管理の進歩によっても,このような悪循環に陥った患者を救うことは非常に難しい.敗血症性ショックでは,1つには,組織の微小循環障害から生じる酸素代謝の破綻が組織障害の大きな原因であるが,それと同時に生体内で産生される過剰な種々の化学伝達物質(chemical mediator)がショックを助長させ進行させていく.炎症の場は血管内皮細胞であり,血液凝固系,キニン系,補体系などが複雑に関与し合い,肥満細胞からのヒスタミンも加わって,血管拡張,血管透過性の亢進を引き起こす.
最近では、インターロイキン1(IL−1)やTNFなどの炎症性サイトカインが,ショックの進展にきわめて重要であることがわかってきた.亢進した炎症性サイトカインは,サイトカイン相互を誘導し,プロスタグランディン,一酸化窒素(nitricoxide),血小板活性化因子(PAF)などを生じさせ,発熱,低血圧,白血球の活性化をきたし,組織障害へと進展させる.これらの反応経路は,侵襲の原因が感染であろうと,外傷,熱傷であろうと共通のものであり,炎症性サイトカインの過剰産生はショックの進行に本質的な役割を担っていると考えられる.
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