臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・6
炎症性腸疾患におけるサイトカインの発現
渡辺 守
1
,
上野 義隆
1
,
矢島 知治
1
,
高石 官均
1
,
井上 詠
1
,
岩男 泰
1
,
石井 裕正
1
,
相磯 貞和
2
,
日比 紀文
3
1慶應義塾大学医学部内科
2慶應義塾大学医学部解剖
3慶応がんセンター
pp.1193-1198
発行日 1994年9月20日
Published Date 1994/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901636
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はじめに
消化管粘膜は,絶えず暴露されているウイルス,細菌などの微生物,食餌性抗原,異物の侵入を阻止するために共通粘膜免疫機構(common muco-sal immune system)を形成し,局所において最前線の生体防御を営んでいる.その中核をなすのが,他の場所では認められない特殊な腸管リンパ装置(gut-associated lymphoid tissue;GALT)である.GALTは生体に侵入しようとするある種の抗原物質に対しては抗体を産生し,キラーT細胞を活性化してこれを排除しようとするが,その一方,無数の食餌性抗原に対しては,むしろ抗体産生を抑制しアレルギー反応が起こらないようにするという二面性の仕組みをもっている.GALTにおける体液性免疫応答の主役は分泌型IgA抗体であるが,近年,IgA抗体産生の調節機構,上皮間リンパ球(intraepithelial lymphocyte;IEL)および粘膜固有層内リンパ球(lamina pro-pria lymphocyte;LPL)を含む消化管粘膜内リンパ球の特殊性,自律神経と免疫系の相互作用など消化管免疫の複雑な機構が解明されるにつれ,全身的な免疫応答における粘膜免疫の重要性が再認識されている.
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