特集 MRSA感染症対策の実際
<序>院内感染対策と教育
清水 喜八郎
1
1東京女子医科大学内科
pp.707-708
発行日 1993年6月20日
Published Date 1993/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901173
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病院感染予防と教育
近年,MRSA感染症を中心に病院感染が種々議論され,テレビ,新聞にその話題が取り上げられることが多くなってきた.確かに,病院感染の歴史は長く,すでに18世紀頃から問題として取り上げられていた.しかし,20世紀における医療の進歩のなかで,特筆されるべきものの1つであるペニシリンの発見,そしてその後の素晴らしい抗菌薬の進歩が,伝染病をはじめとする微生物により惹起される疾患への対応に関する医療従事者の考え方に,安易性を持ち込んだことは事実である.その産物として,MRSA感染症を誘発したと考えて間違いはない.
今日の病院の入院患者の多くは,compromisedhostであり,MRSAはブドウ球菌であることから,組織侵襲性が強いこと,対応できる有効な抗菌薬が少ないこと,現在存在する薬剤ではその投与すべき時期を失すれば必ずしも有効な治療が行えないことなどが相俟って,院内にて保菌者からcompromised hostへの感染が起こり,ひとたび感染が発症すれば重症かつ難治感染へと移行していくことが大きな問題であることもよく知られている.それだけに,病院感染予防対策が重要である.
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